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3、容赦なく過ぎていく時間は、君への思いを綴るには短すぎて  です。

お題の5、4の続きです。
九龍サイドにしました。
何か九龍→←神鳳な雰囲気になってきましたね。


お題はここです。







3、容赦なく過ぎていく時間は、君への思いを綴るには短すぎて




 これはただの暇潰し
 甘やかな時の中での冷たい駆け引き
 細められた瞳の奥の鋭さを、甘い口付けで掠め取る
 決して短くは無い時の中での、楽しみ……だった筈
 さて囚われてしまったのは、どちらなのでしょうか……



 ふと目が覚めて。冷たさと微睡む思考に身を委ねる甘い時間。腕の中の温もりに思わずしがみ付くと、ふわりと薫る香。ぼやける視界に眉を顰め、腕の中を覗くと。滅多に見られない、無防備な表情。

「良いもの見られましたね」

 不意打ちに湧き上がる思いに苦笑して、優しく抱き締める。たまにはこんな事もいいかと、目を閉じた。胸に寄せられた額に小さくキスして、真っ直ぐな髪を撫でる。さらさらと流れる髪にまたキスをして、睡魔に身を委ねた。

「九龍さん、いい加減起きて下さい。学校に遅れます」
「ん……」

 薄っすらと目を開ければ、いつものような隙の無い表情。隙無く乱れ無く制服を着て、困ったように首を傾げる彼にふと悪戯心が生まれる。軽く目を擦って彼の方に手を伸ばせば、溜息を吐きながらも手を貸してくれて。伸ばされた手を掴み、そのまま思い切り引っ張った。

「っ!?」
「おはようございます」

 ベッドの中に引きずり込んで、微笑んで見せれば。そこには驚いたような表情。それは常に無い、隙のある表情。すぐに消える、泡沫のようなものだけれど。時折見せる表情に惹かれてしまう、今までに無い感情。こんな感覚には慣れなくて、それがとても楽しい。可愛い、珍しい表情はすぐに消えて。いつものような、眉一つ動かさない表情で私の腕から逃れようと身を捩る。それを許さず、抱き締める腕に力を込めれば冷たい双眸が私を捕えた。

「九龍さん、離して下さい。学校に遅れてしまいます」
「別にいいでしょう、成績いいんだから。私も雛先生の授業じゃないですし」
「そう言う問題ではありません。出られる時に出ておかないと……」

 言いながら身を捩る。聞き分けのない子供を窘めるように、咎める響きが耳につく。決して心地良い物ではないのだけれど、彼の声なら聞いていたいとも思う。相当に重症みたいだ。

「もう少し、こうしていさせて下さい。せっかく、貴方の温もりを感じて起きられたのですから……」
「……そんなの、僕のせいじゃありません。貴方が居なくなってしまうんでしょう」

 ほんの少し、力の抜けた言葉が愛しい。責めるような響きと、そんな言葉を言った事への後悔が滲む。いつもの彼とはとても違う。私が隣で眠ったのがそんなに珍しいのか……それとも、嬉しかったのか。随分と可愛らしい彼を胸に抱きこんで、耳元で囁く。

「隣で眠るとずっとこうしていたくなってしまいますからね……でも、今日くらいはいいでしょう? もうこうなってしまったんだし、貴方への愛を囁く時間にしてしまいましょう。ね?」

 耳に唇を押し付けて、甘く甘く。我ながら芝居がかっているとは思うけれど、納得尽くでの芝居なら大袈裟な方が楽しい。どうせ時間などもうあまり残っていないのだから。容赦なく過ぎていく時間に、逆らう事なんてできなくて。想いを綴る時間など短すぎる。だから、触れて。抱いて、囁いて、刻んで。甘く甘く、揺蕩えばイイ。力の抜けた体を、強く強く抱き締めて。

「神鳳君?」
「貴方は、言い出したらきかないですから……」
「それは肯定だと受け取ってもいいのですか?」
「……」

 決して口にはしないのをわかって、それでも問う。ほんの少し下を向いた彼の表情は読めなくて、震える肩は何を堪えているのか。笑い出しそうなのか怒り出しそうなのかそれとも、泣き出しそうなのか。想像する楽しさに、ほんの少しの苦味が混ざり始めたのは何時だったのだろう。
 傷付けず、傷付かず。真綿で包むような愛を与えながら、ひとときの安らぎを得る。睦言を囁きながら、冷めた瞳で観察する。本気にはならず、捕える。恋と言う名のゲーム。ただ、それだけを楽しめなくなってきたのは。呆れたように、冷めた彼の瞳に揺らめく色を見たからか。それとも、そんな物は関係無しに私が囚われてしまったのか。

(随分と重症だな……)

 小さく溜息を吐けば、体を震わせる彼が居て。情事の後、意識を飛ばした彼から離れ難く。つい横になってしまったことを思い出す。背の高い割に細い彼の肩に顔を埋めて、笑う。やっぱり自分の目は間違っていなかったと。これだけ楽しいゲームは初めてだから。

「どう、したのですか?」

 笑った振動が伝わったのか、首を傾げる彼の頬に口付ける。首筋に、見えるように後をつける。

「っ、九龍さん!」
「愛してますよ、神鳳君」
「……」

 黙り込んだ彼の表情は複雑そうで。まだまだ勝負はついていないことを知る。それで、いい。過ぎ去っていく時間は残り僅か。最後の一秒まで結果はわからない。だからこそ楽しいのだ。

 揺れる瞳に口付けて、言葉を閉ざす
 甘い声と艶めく瞳
 愛しい人なら、必ず
 手に入れて、みせるから……


―――――――――――――――――――


九龍サイド。
攻め九龍は結構決断早いです。受け九龍みたいにぐるぐる悩んだりしないでスパッと。
大雑把さが強調されて、あんまり深く考えないんですね。
勿論計算高さも加わってとても黒い人ですが(笑)






(ねぇ、だって、もっと傍に)
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