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2、何を犠牲にしてもいいと、思ってしまったんだ



お題の5、4、3の続きです。
またしても九龍サイド。
どっちかと言うと九龍→神鳳な雰囲気を前面に。

お題は ここ





2、何を犠牲にしてもいいと、思ってしまったんだ



 僕は彼に囚われた
 もう、誤魔化すことはできない
 墓を荒らす、《宝探し屋》を
 愛しいと、思ってしまったから
 あの日、あの時
 救われて、しまったから……



「どうしたのですか、こんな時間に」
「九龍さん……」

 月の照らす、学校裏。もう少し歩けば墓地が見える、そんな場所。生徒会の役員ともあれば見回りくらいするだろうけど、いくら私に協力してくれると言ったってそのくらいの事はするだろうけど。壊れそうな儚さはいつもの彼ではない。顔色一つ、変えることは無いけれど。今にも泣き出しそうな雰囲気も、消えてしまいそうな儚さも常の彼のものではない。かと言って、何かに操られているわけでも無さそうで。

「顔色が悪いですよ。どうかしたのですか?」
「……」

 ふいと、目を反らして。まるで逃げるかのように、私を無視して歩きだそうとする。校舎の影に飲み込まれるように、去ろうとする彼の腕を掴んでそのまま壁に押し付ける。

「……止めて下さい」
「何故逃げるのです?」
「逃げてなんか……」
「いないと、仰いますか?」
「……」

 沈黙。目を伏せる彼はとても辛そうで。色々と思い詰めやすい彼だから、きっと今も考えなくていいことを考えてしまっているのだろうけど。壁に押し付けた彼に近付けば、ほんの少しの身長差に彼を見上げて。

「どうなさったのですか?」
「……」
「神鳳君」

 黙った彼は目を伏せるけれど、私の方が身長が低いせいで表情が見えなくはならない。泣くのを堪えるような、叫び出しそうな複雑な表情。今までの彼には見えなかった、揺らぐ視線。
 いや、見えなかったわけではないのかもしれない。私が、見ようとしなかっただけ。居心地の良い空間を壊したくなくて、ゲームの終わりを作りたくなくて。ただ、甘えていただけなのかもしれない。

「ねぇ、神鳳君。私のこと、好きですか?」
「え……」
「私に、協力して下さるんですよね? でも、良いんですよ? 生徒会を……阿門君を、離れたくないのでしょう?」

 彼の顔色が変わる。先程よりもさらに青白く、今にも倒れてしまいそうなほど。

「そ、んなことは……」
「私は神鳳君のこと好きですよ? だからこそ、今の貴方を見ているのは辛いのです。今の貴方は、とても辛そうですよ」
「九龍さん……」

 やはり、神鳳君の顔色は冴えない。何かを言いたくて、でも何を言ったらいいのかわからないような。小さな子供のような彼に、私があげられる言葉がわからない。何を言えば彼が元に戻るのか。例えば今言ったようなことも、私の本心ではあるのだけれど。彼にとっては、気を使われているようにしか感じられないのだろうか?

「神鳳君?」
「わた、しは……阿門様を、裏切りたくはない。でも、貴方に救われてしまったから、私は……」

 小さく、切れ切れに。紡がれる言葉はたどたどしく、常の彼の姿ではない。幼いと言ってしまってもいいような、困惑した表情。安心させるように彼を抱き締めて、囁く。

「裏切り、と言うのはあまり私には聞きなれない言葉なのですが……私は、今までの関係がとても心地良かった。例え敵対しているとしても、貴方の部屋を訪れれば貴方は部屋へ上げてくれる。勉強を教えてくれたり、一緒に食事をしたり。体を重ねる事もそうですが、そんな日常がとても心地良かったんです。だから、貴方が変わることはないと思いますよ?」
「……」
「何かが変わるとしたら、それは全てが終わった後です。貴方も……彼らも、全てが救われてからではないでしょうか」

 私の言葉にはっとしたように顔を上げる。私は軽く微笑んで、彼の言葉を塞ぐように口付けた。
 そう、私たちの関係が変わるのは全てが終わった後。私はもう決めている。ゲームの結果がどうであれ、私の取る行動は一つ。例え何を犠牲にしてでも、私の手には宝が一つ。必ず、手に入れてここを出て行くと決めたのだから。

「もう少し、楽に考えて下さい。真面目なのは良いことですが、思い詰めれば心が壊れてしまいますよ。貴方は貴方の思うままに、行動すれば良い。私も、彼らも、そうするのですから」
「九龍さん……」
「良いんですよ、今考える必要の無いことなど忘れていれば。貴方は、貴方の気持ちに素直になれば良い」
「随分、簡単に言ってくれますね……」

 ほっと、息を吐いた。私に寄りかかるように体を預けて息を吐く彼の表情は、見違えるほどにとは言い辛くとも先ほどよりは明るい。小さく笑って啄ばむように口付ければ、そっと抱き締め返してくる。
 私は彼が愛しい。決して放しはしない。必ず捉まえて、手に入れる。そのためには、邪魔なものを排除しなければならない。例えそれが大切な親友でも、彼の大切な人でも。私の望むとおりにするには、彼らの意思を徹させてはいけない。私の望むままに、犠牲は一人も出さない。
 心まで、救えるとは思っていないけれど。

「神鳳君」
「はい?」

 首を傾げる彼は、結果をどう思うのだろうか。全てが終わった後、犠牲を出すつもりは無いけれど。体の傷は残らなくても、心に負った傷は治り難いものだから。そして私は、そこまで救けてやることはできない。傷付いた彼らを見て、彼は哀しむのだろうか。

「九龍さん?」
「何でもありません。そろそろ寮に戻りませんか? 冷え込んできましたし」
「……そう、ですね」

 いきなり話を変えた私を見つめ、それでも追求しては来ない。私の考えを見透かしているわけではないのだろうけれど、彼の優しさが心地良い。
 今は、まだ。必要の無いことなど考えなければ良い。彼の優しさに甘えて、いつか手にする幸せを。そう、必ず幸せにして見せるから……


――――――――――――――――――


九龍サイド。
なんと言うか、攻め九龍はかなり我道行く人です。本気になったらイノチ懸けなのは受け九龍と変わらないですが、決断が早くて女々しくない。
……うち、九龍受けサイトですよね?
なんか、受け九龍よりかっこ良くなっていくー。
良いんだ、受け九龍は色っぽいって言ってもらえたから。






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